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DLC

DLC (Diamond-Like Carbon)

DLC
(Diamond-Like Carbon)

  • 炭素(原子記号:C)は、有機物と無機物を分ける基準となる重要な元素です。炭素は結合形態によって全く異なる物性になりますが、代表的な例として、sp<sup>3</sup>結合だけを持つ場合はダイヤモンドになり、sp<sup>2</sup>結合だけをする場合は黒鉛になります。
  • DLCコーティングは、プラズマ中の炭素イオンや活性化された炭化水素の分子を電気的に加速し、高い運動エネルギーで基板に衝突させることで薄膜を形成させるプラズマ表面処理技術です。 このように生成されたDLC薄膜はダイヤモンド及び黒鉛とは異なり、特定の結晶構造のない非晶質(Amorphous)の物質で、sp<sup>1</sup>、sp<sup>2</sup>、sp<sup>3</sup>結合が混在しています。
  • DLCはその硬度、耐腐食性、耐摩耗性、摩擦係数などの物性がダイヤモンドに匹敵するほど非常に優秀で、Diamond-Like Carbon(DLC)という名称が広く通用しています。

Diamond 構造 (sp3)

Amorphous 構造 (sp2, sp3)

Graphite 構造 (sp2)

DLC/ダイヤモンド/黒鉛の物性比較
特性 ダイヤモンド DLC グラファイト
密度 (g/cm3) 3.51 1.8 – 3.6 2.26
硬度 (Kgf/mm2) 10000 2000 – 8000 500
摩擦係数 0.05 0.03 – 0.2 0.1
屈折率 2.42 1.8 – 2.6 2.15 – 1.8
光透過性 UV-VIS-IR VIS-IR Opaque
抵抗(Wcm) > 1016 1010 – 1013 0.2 – 0.4
DLCコーティングの構造
  • 水素を含むDLCは、a-C:H(Hydrogenated Amorphous Carbon)といいます。
  • 水素を含まない非晶質の炭素薄膜は、ta-C(Tetrahedral Amorphous Carbon)といいます。

a-C:H 構造

ta-C 構造

DLCコーティングの特性と応用
多層膜コーティング(Multi-Layer DLC Coating)
  • DLC膜の合成の時に形成される高い残留応力は、薄膜の密着力を弱化させ、これはコーティング製品の耐久性を低下させます。 DLCコーティング製品は、摩耗などの薄膜自体の破損より密着力の不足による薄膜の脱落が寿命短縮の原因になる場合が多いです。 したがって、薄膜の密着力は薄膜自体の物性に劣らず重要な性質になります。
  • 当社は、DLCの密着力を改善するために、対象素材によって様々な種類のバッファ層(buffer layer)を研究開発してきました。 超硬、炭素鋼、アルミニウム、黄銅などの金属やガラス、プラスチックの非金属材質の上にそれに合うバッファ層を生成させ、その上にDLCを蒸着させることで薄膜の密着力を画期的に改善しました。